Magazine        Chow Sing Chi

 

雑誌[fai]ファイ Vol.10(2002年12月発行)

星馳@会社a



『少林足球』の大ヒットにより、日本でも知名度をぐんとアップさせたチャウ・シンチー。
『少林足球』の快進撃は今だに続いており、アジア全土、フランスでの公開に引き続き、アメリカ公開が決定した。アメリカで『少林足球』がどこまでヒットすることになるのか、その動向も楽しみだ。
チャウ・シンチーのインタビューのために、香港にある彼の会社、星輝海外有限公司を訪ねた。大スターだから、すごいところにいるんだろうという、我々の期待を裏切り、小さな雑居ビルの中にその事務所はあった。
お世辞にも「きれい」とはいえない、雑然とした狭いオフィス。ふと、目をやると、『少林足球』に出演していたティン・カイマン(鎧の肌)、リン・ヅーソォン(太った人)が机に向かい真剣な表情で仕事をしていた。ほかにも、映画に出ていた人がチラホラ。まるで一般人のように働く役者がいる会社を作るとは、何とも面白い。
-----『少林足球』は香港だけでなく、他の国でも大ヒットを続けていますが、こうなることは予想してましたか。
星馳 : いいえ、予想はしていませんでした。この題材は人に受け入れられやすいものだから、いけそうだと思っていたけど、正直ここまでヒットするとは思いませんでした。
-----どの国でも観客の反応はよかったですか。
星馳 : はい。特に、日本の観客の反応はよかったですね。日本に宣伝に行ったとき、映画館で観客が見ているのをこっそり袖から見ていたんです。見ている人が、みんなで拍手して喜んでいるのを見て、思わず涙がぽろぽろと出てきました。
-----そういうお話を聞くと、こっちの方が嬉しくて、涙がでちゃいますね。
星馳 : ありがとう!(と、笑いながら、目に手をあて、涙を拭くような仕草をする。)
-----シナリオの段階と完成したものでは、途中で変わったところがあると聞きましたが。
星馳 : いろいろ変わりましたよ。
-----何か象徴的なものを教えていただけますか。
星馳 : 元々は主役にからんでくる女の子は二人にする予定だったんですが、結局は一人にすることにしました。これは大きいですね。三角関係にしようと思っていたのですが、撮ろうとした時は、時間があと3週間しかなかったから、『もうこの人はいいや』と省くことにしました。シナリオの中と、僕の頭の中にはあったけど、彼女は撮っていなかったからいいやとね。
でも、撮り終えてわかったんだけど、そうしておいてよかった。シンプルが何よりもいいですからね。
-----チャウさんの映画の出演者は、スタッフから選ばれている人もいますが、それはなぜですか。自然な演技ができる役者さんがいないからですか。
星馳 : (いたずらっ子のような笑顔を向けて、だまってうなずく)
真剣な話、予算の節約になるというのもあるし、ウチのスタッフは元々、役者に興味がある人が多いからですね。ティン・カイマンなんて、演技が下手だから、誰もチャンスを与えてくれなかった(冗)。かわいそうだから、僕がチャンスを与えてあげるんだ(笑)。もちろん、僕自身も芝居は下手なんだよ。でも彼は僕より芝居が下手だからね(笑)。
-----監督として、使ってみたい役者はいますか。
星馳 : いますよ。
-----それは具体的に誰ですか。
星馳 : ハッハッハッ。多すぎて思いつかないですね。日本の役者とか、若い新人とかいっぱいいると思います。
-----ところで、いつも脚本はどうやって書くのですか。
星馳 : 僕が題材や方向を決めてから、ライターとスタッフを集めて、その内容を話します。
僕が『ベラベラベラ(広東語だとコンコンコンという音に聞こえる)』としゃべって、その場でライターが聞いて、書いていく。『コンコンコン』『コンコンコン』、話す・話す・話す、聞く・聞く・聞く、書く・書く・書く、そんな感じですね。
そういうときは、たくさんの人を集めて、話しながら、意見を聞き、一番いいものを探していくんです。
-----アイデアが詰まったときはどうするんですか。
星馳 : 僕の経験上、家に帰って、バスタブに立ったまま入り、『わからない』『わからない』とやるんです(話しながら、同時に頭を両手でたたくような仕草をする)。すると『はあ』とアイデアが出てくるんです(笑)。
-----撮影を始めるときは、もうどんな絵を撮るか決まっているんですか。
星馳 : はい。そうです。
-----現場で、コロコロと変わっていくという話も聞きましたが。
星馳 : そうですね。現場ではいろいろ変わります。
-----役者の演技指導とかはどんな風にするんですか。
星馳 : いろいろなタイプがあるからね。どう返事していいかわからないですね(笑)。まあ、多いのは、演技を教えるというわけではなく、『この演技について僕はこう思うけど、君はどう思う』と、ここでも『コンコンコン(ベラベラベラ)』とおしゃべりして、リハーサル、リハーサル、リハーサルをやって、撮ってみる。見て、ダメだったら、またリハーサル・リハーサルをして、見て、ダメ。その繰り返しですね。
-----映画を撮るときに大事にしていることは何ですか。
星馳 : 観客が見て面白いと思うこと、喜んでくれることが一番大事です。
-----コメディを撮り続ける理由について教えてください。
星馳 : 笑うことは気持ちいいから、コメディを続けていきたいと考えています。でも、今考えている新しいシナリオは、笑うところは少ない、真剣なカンフーの映画です。次はそれを試してみたいですね。
-----次のカンフー映画はまだシナリオの段階とのことですが、どんな予定ですか。
星馳 : 今年の終わりにクランクインできればいいと思っています。半年で撮って、1年後に公開になっていればと考えています。
-----チャウさんが「役者は引退する」という噂が流れていますが、真相はどうですか
星馳 : 髪もこんなだし(と、白髪が少し目立つ頭を指す)、年もとってきたから少な目にしようと思っています。でも、次の映画も僕が主役だしね。まぁ、題材が決まったら、適当に決めていくつもりです。
しかし、実際、監督と役者を一緒にやるのは大変だし、演技がまずくなるという懸念もあります。演技に専念した方が役者としてはよくなると思うんです。これからはどちらかというと、役者を減らして監督に専念したいと思います。

星馳@会社b

∴記事の一部を抜粋しています。またこの他、田啓文(ティン・カイマン)さんや陳國坤(チェン・グォクン)君へのインタビュー記事があり、星馳に関することなどを語られています∴